Friends will be friends (5)

随分と見た目が変わっていて、驚いた。しかしそれはお互いさまである。とにかく、ふたりは無事出会うことができた。

普通、こんな「有名人」ならおしゃれなレストランにお連れするだろうが、本人の希望は「ディープな地元の店」だった。それほど飲み歩かない私にとって、このタスクはかなりハードルが高かったが、ちょうど家の近くにそれらしき居酒屋があるので、そこにしたのだ。店に入った彼は気に入ってくれたようで一安心した。

なんと言っても30年なので、話すことは山ほどある。私は特に整理が得意というわけではないのだが、30年前に二人で働いていたときの写真を自宅で見つけることができたので、それを持ってきた。
「あー、この先生誰だっけ?」と本人は覚えていなかったりする。私の脳はあまり重要でないことを記憶しがちなので、「この先生はO先生、これが事務のKさん、この生徒はT君……」と説明した。二人で写っているものもあった。「Before-Afterの写真を撮ろう!」と彼は昔の写真と同じポーズで二人を自撮りした。

彼は映画作りの面白さだけでなく、その大変さも説明してくれた。私たちはできあがった作品だけ観ているので、作っている本人から聞く苦労話に現実味がある。

「それで、今日はもちろん久しぶりの再会を楽しみにしてきたんだけど、目的は他にもある」と彼が切り出した。「そのひとつは、昔、僕に言ってくれた言葉について。何かの折に僕の作品を観てくれて、『Eさん、素晴らしい作品だけど、ベクトルが内向きだ。外に向けなきゃ』と言ったの。そんなこと誰からも言われたことなかったから、すごく衝撃的だった。今まで、忘れたことはなかった。外に向けなきゃと思ってずっとやってきたよ。それを言いたかった!」

私がそんな大それたことを尊敬のまなざしで見ていた彼に言うだろうか、と信じられなかったのだが、彼は頑として私が言ったと言う。「いやぁ、大御所にそんな偉そうなことを言ってゴメンね」「いや、ありがたいと思ってる。それを伝えに来た」と言ってくれた。

「そして、もうひとつ目的がある」と言って、彼は泡盛のソーダ割りを自分で作った。